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さいたまゴールド・シアター 高齢者劇団 今度はダンス

5月にパリ公演を成功させた高齢者演劇集団、さいたまゴールド・シアターが14~16日、与野本町の彩の国さいたま芸術劇場でダンス公演に挑む。
世界的に活躍するドイツの「ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団」のダンサー、瀬山亜津咲あづさの演出・振り付けで新たな身体表現による作品を披露する。
さいたまゴールド・シアターは、演出家・蜷川幸雄の発案で2006年に結成され、現在は平均年齢74・2歳の男女41人が在籍。人生がにじむ演技と、ダイナミックな演出の相乗効果が感動を呼ぶ。
瀬山は、パリで彼らの「鴉からすよ、おれたちは弾丸たまをこめる」を見た。老いた女性の集団が法廷を占拠する迫力の舞台だ。「素晴らしかった。人生を長く歩んできた人たちならではの言葉と表現がある。重みが違いますね」と振り返る。
瀬山は群馬県出身。00年に現在の舞踊団に入った。そこでは、鬼才振付家の故ピナ・バウシュが確立した「タンツテアター」という独特な手法を取る。ダンスの技巧に目を向けるのでなく、個人の体験を作品に取り入れる。瀬山は12年夏に4日間、ゴールド・シアターに身体表現を指導した縁で、作品作りを任された。
「皆さんがストレッチをすると、身体のどこが硬いかが分かり、そこから踊る時の形も分かる。人生が出るんだなあと思いました」
創作法はバウシュの流儀を踏襲する。瀬山が「子供の頃の夢は?」などの質問を投げかけ、答えを劇団員が身体で返す。彼らの表現手段は踊り、寸劇、歌、語りと何でもあり。それらを瀬山がダンスに構成する。
「テーマを決めずに自由に表現してもらっている。一人一人の美しいところを見つけて、どう構成するかを考えています」
劇団員たちは新鮮な経験にうれしそうだ。男性最年長の85歳の高橋清は「こんな楽しい稽古は初めて。今までは台本があって、演出家の言う通りにしてきたが、今回は自分たちが作る。言いたいことがいっぱい出てきます」と語る。また、77歳の神尾冨美子は、「うまく踊れないのよ。みんなが左に行くと私だけ右に行っちゃう。ただ、出来なかったことが出来るようになるとうれしいですよ」と照れ笑い。
そんな劇団員たちとの触れ合いは、瀬山にとって楽しい経験となった。「休憩時間に『ナス食べる?』と聞いてくれたり、お漬けものをもらったり。皆さんから日本の良さを教わっています」。
元記事 : YOMIURI ONLINE 配信日時 : 2013-08-13